夢日記
夢の途中で目を覚まし
目蓋閉じても戻れない
さっき迄鮮明だった世界
もう、幻
私は目を覚ました。
ふと周りを見渡すと、そこには薄暗く湿り気を帯びた異様な空間が広がっていた。
私は暫く彷徨い歩いたが、自分が今いる場所も、自分が置かれている状況も、最初は何一つ分からなかった。
しかし次第にその暗夜行路の正体に気付いてゆく。
ピンク色でブニブニと肉のような質感の、筒状の空間。
辺りに充満する饐えた臭気。
足を強く踏み鳴らす度、それに連動して自らの下腹部へと襲いかかる謎の異物感。
私は気づいた。
そう。私は今、私の肛門の中に居るのだ。
私は徐に自らの肛門の中へ腕を突っ込み、私を引っ張り出そうとした。
ゆっくりと菊穴へ侵入していく。まずは指を1本。2本、3本と続いてゆき、やがて肘から上全体が肛門に入っている形となった。出口が入口となる日常の逆噴射。
余談だが、入口(出口)はきつく引き締まっているのに対し、内部はある程度の広さがあり腸壁も柔らかかった。
外キツキツ、中ふわふわうさぎちゃんである。
私は私の中をまさぐり、私を探した。
私は私の手が、私を探しに私の中へと入って来るのを見つけた。
自分の手に掴み掴まれ、腸内を抜けてゆき、やがて出口に辿り着いた。
ようやく外に出られる……そう思ったのもつかの間。
引っ張り出された先は、またもや私の肛門であった。
当然だ。肛門にいる自分が肛門から自分を引っ張りだしたところで肛門から出られる訳がない。
しかし、私は無我夢中になって脱出しようとする。心の何処かで無謀であると薄々知りながら。
延々と自分の肛門に手をねじ込み、肛門から自分をひり出し、自分の肛門へと放り出される作業を何十回、何百回、何千回とループする。
私は「肛門無限回廊」に陥っていた。
先の見えない泥沼、もとい糞沼に嵌り、踠いても足掻いても抜け出せない。
夢ならば、どれほど良かったでしょう。
家
自分が数年前に暮らしていた家についてお話します。(怪談)
父の実家で祖母が暮らしていました。祖母が他界したのち暫く放置されていましたが、税金やら当時住んでいたマンションの家賃やらの問題でそこへ引っ越しました。
あの家を一言で表すなら「廃墟」でした。良く言えば年月を偲ばせる歴史ある古民家、悪く言えば耐用年数をとうに過ぎた廃屋でした。
たぶん衛生環境は香港の九龍城砦かナウシカの腐海並みだったと思います。どう考えても文明人の過ごすべき居住地ではなかった。
もはや日本国憲法第25条「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に違反している域でしたが国は何もしてくれませんでした。マザ○ァカ!
天井は雨漏りでグズグズに腐敗しきっており、時折得体の知れないキノコが群生していました。
キノコというよりモヤシに近い見た目でした。いかにも「自分毒持ってます!」みたいなカラフルな見た目でなかったのがせめてもの救いでした。マリオのスーパーキノコみたいなのが生えててもおかしくない程度には水分や養分を含んだ肥沃な天井だったんですがね。
壁の中はネズミ達の住処と化していたらしく、カサカサ、チューチューなどバリエーションに富んだ生活音が聞こえてきました。音の数からして結構な数のネズミが暮らしていたらしく、一つのコミュニティだかコロニーだかを形成していた事が伺い知れました。
壁を殴ると一瞬だけ静かになります。
ネズミだけでなく蜘蛛や百足やゲジゲジといった多足類、蛇やトカゲだかヤモリだかの爬虫類などなど、他種多様な「ゆかいなもりのなかまたち」が遊びに来てくれました。
もちろんほとんどのお友達はお帰りにはなりませんでした。
駆除を免れたのは台所に侵入してきた野良猫と、おそらく猫が捕まえてきたモグラくらいでした。
猫は多くの小動物を狩っては食べますが、なぜかモグラだけは捕まえるだけ捕まえて食べはしない事が分かりました。
多分ですが土を飲みこんでてジャリジャリジャリするから嫌なんだと思います。アサリかな?
で、まあそんなプリミティブかつエキサイティングな家でかれこれ4、5年過ごしたのち、母が精神病になったのを機にようやく「健康で文化的な最低限度の生活が可能な家」に引越したのでした。おせーよ。
付かず離れず
「人生は有限だ」
「1秒だって無駄には出来ない」
とはまあ至極真っ当かつ高尚な意見だが、およそ十数年間を無駄に生きてきた自分のような人間にとっては「時間を浪費すること」が人生における義務でありルーティンと化しているきらいがある。
明日が来るまでの無気力な夜の時間を、出来る限り脳みそを働かせずに潰したいと思うぐらい磨り減った自分には、匿名掲示板の下世話な便所の落書き(2ちゃんねる)や、著作物を切り貼りして作った毒にも薬にもならない下らない動画(ニコ動のMAD)くらいが丁度良い。
今をときめく芸能人やらYouTuberやらの煌びやかなデイリーは、引っ掻けば底が見えるほどに痩せ細った自分にはハイカロリーすぎる。
最近は料理とも何とも言えないモノを作っている。野菜をごま油とドレッシングで和えるだけでも割と美味しく食べれる事が分かった。
舌が貧しくて助かる。自分にはこれくらいが丁度良い。
いつだって付かず離れずの丁度良い場所を探している。
そこへ凸凹みたいに身を嵌め込めれたら良いなと思う。
糸
欠点が多すぎる。
どれか一つを直そうとしても、他の欠点に足を引っ張られる。
こんがらがった糸屑みたいだなと思う。
いっそ丸めてゴミ箱にポイと捨ててしまった方が良いのかもしれない。
紆余曲折のトラウマが複雑骨折を起こしている。
誰か器用な方、一本一本丁寧に荷解きする術を伝授してください。